多汗症について

暑くなって来ましたね。暑くなってみなさん気になるのが”汗”ではないでしょうか?

汗が多いと、一日に何度も着替えなければならなかったり、人目が気になったりして日常生活で困ることが多いですよね。人と手をつなぐこともはばかられますよね・・・。

 

多量の汗をかくことで生活に支障をきたす病気もあり、それを多汗症と言います。

多汗症とは、全身の発汗が増加する全身性多汗症と体の一部のみの発汗量が増加する局所性多汗症に分類されます。

局所性多汗症は手掌、足底、腋窩、顔面など、体の一部に局所性に発汗が見られます。緊張や運動などで増悪することが多く、安静時でも蒸発量を超えた発汗を生じることが多いため、QOLの低下を来します。

 

原発性局所多汗症の発症のメカニズムはまだ分かっていません。

汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺があり、局所性多汗症を起こすのはエクリン汗腺です。エクリン汗腺はほほ全身に分布していますが、特に多く分布しているのは手掌、足底、腋窩です。そのため、手掌、足底、腋窩の多汗の訴えが多いのです。

 

アポクリン汗腺による発汗はアドレナリン作動性と考えられており、主に情緒刺激で発汗します。においの原因は主にアポクリン汗腺の分泌物ですが、そこから分泌される汗そのものは無臭です!汗に含まれる脂質やタンパク質が、表皮の常在菌によって分解され、においの原因物質が生まれます。

エクリン汗腺から分泌される汗も無臭ですが、ニンニクや薬剤よって臭気を帯びることもあります。人に会う前にはニンニクを食べ過ぎないようにしましょう・・・。

 

多汗症の治療として、以下のものがあります。

  • 塗り薬

塗り薬は軽症~重症のすべての患者様に有効です。新しい治療薬である抗コリン外用薬も2023年6月から登場しました。局所多汗症のメカニズムはわかっていませんが、脳の前頭葉や大脳辺縁系の異常によるものではないかと言われています。汗腺を支配する交感神経はコリン作動性の神経であり、アセチルコリンが汗腺に発現するムスカリン受容体に結合することで発汗が生じます。その汗腺細胞に発現するムスカリン受容体に結合し、アセチルコリンの作用を阻害することで制汗作用を発揮するのが抗コリン外用薬です。腋窩多汗症にはラピフォート®ワイプやエクロック®ゲル、手掌多汗症にはアポハイド®ローションが適応になります。

  • 内服

脳に作用し自律神経の乱れを調整することで症状を改善するグランダキシン®錠と副交感神経を亢進させるアセチルコリンの作用を抑えることで症状を改善するプロ・バンサイン®錠の2種類があります。内服は軽症~中等症の患者様向けで、全身性の副作用が出やすいというデメリットがあります。

  • 注射薬(当院では行っておりません)

ボツリヌス毒素局所注射療法があります。重度の腋窩多汗症に保険適応です。

  • 手術(当院では行っておりません)

胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)などがありますが、ガイドラインでは術後合併症の観点からまず外用療法を施工し、難治性を示す場合に行うように推奨されています。

 

症状や箇所に合わせてお薬は処方可能ですので、まずはクリニックにてお気軽にご相談ください!

 

また、日頃から市販のデオドラント製品を使用することで汗やにおいを軽減することもできます。

 

◎デオドラント製品の効果的な使い方

・手を清潔な状態にする

・塗布前にしっかり乾燥させる

・塗るタイミングを意識する

 

塗布するタイミングは就寝前がベスト!

就寝前は、交感神経の働きが穏やかになり、手汗が少ない状態となるからです。クリーンな状態を維持しやすく、有効成分を肌へと浸透させることができます。

 

【参考文献】

・「MonthlyBookDerma.No.335多汗症・無汗症診療マニュアル」(2023),全日本病院出版会

・「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」(2023),日本皮膚科学会ガイドライン

・「BellaPelle.vol.7No.2」(2022),メディカルレビュー社

・「株式会社ケイセイ」(参照日:2024年6月13日)

https://www.e-keisei.co.jp/

さの皮フ科クリニック|京都|

2024年6月26日 水曜日