成人型アトピー

アトピー性皮膚炎とはよく聞く病気ですが、成人型アトピーについてはご存じでしょうか?
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹を慢性に繰り返すアレルギー疾患の一つで、アトピー素因を持っています。アレルギー体質で、皮膚のバリア機能が弱い状態にあり、それにより皮膚の炎症があります。
アトピー性皮膚炎はその多くが、乳幼児期に発症し思春期(12才頃)までに軽快する小児の代表的皮膚疾患だとされていました。
しかし近年、さまざまな環境の変化に伴い、アトピー患者、特に大人になっても治らない人や、大人になって急に発症する、成人期のアトピーが増加しています。

成人型のアトピーにはいくつかの経過がありますが、主に4つに分類されるといわれます。
① 乳幼児期に発症し、消長を繰り返し成人期に移行するもの、
② 乳幼児期に発症するも、数年後軽快し思春期以降に再び発症するもの
③ 小児期には喘息、鼻炎のみだったのがこれらの軽快に伴い、皮疹が発症するもの
④ 突然発症するもの
幼少期にアトピーの症状がなかった人でも成人期に突然発症することもあり、ひどい乾燥肌や手荒れだと思っていたら、実はアトピーが隠れているということも多くあります。
また、成人期のアトピーは、ほかの時期に比べその症状の現れ方が多彩であると言われています。
例えば、酒さ様皮膚炎、赤ら顔の症状が出たり、頭部の脱毛も関係があると言われています。

アトピー性皮膚炎と紛らわしいものには、接触性皮膚炎(かぶれ)や、脂漏性皮膚炎、乾癬、疥癬などがあります。アトピー性皮膚炎かどうかは、検査だけではなく、繰り返しているか(子供は2か月、大人は半年)湿疹の出方などを総合的にみて医師が判断します。

治療としましては、炎症を早く抑え、症状がない、またはあっても保湿やスキンケアで支障のない状態を維持することが目標です。
基本的には内服の抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬を使って治療していきます。
抗ヒスタミン薬はかゆみを抑えるもので、継続していただく方が効果があると言われています。
ステロイドはその副作用から敬遠する方もいらっしゃいますが、適切に使えば危険なものではありません。こまめに通っていただき症状の状態によって適切な強さのものを医師が判断させていただき、使い方や続け方に関しても指導させていただきます。
ステロイドで炎症を抑え、その後はステロイドとは別の薬効を持つ塗り薬を使用し、湿疹・炎症を予防する治療をさせていただきます。
また、当院では保険適用で光線療法も行っております。週に1回~2回受けていただき、外用薬と併用していただくことでかなり効果を実感していただける治療となっております。

アトピー性皮膚炎はそれがあるだけで仕事やスポーツ、勉強などのパフォーマンスがかなり下がるという研究結果もあり、とても日常生活に支障をきたす疾患です。その病態から完治は困難ですが、しっかりと治療することで日常で困らないほど症状は改善します。
環境やストレスなどによっても症状が出ることがあります。原因の分からない湿疹や痒み、その他の皮膚の異常にもアトピー性皮膚炎が隠れているかもしれません。
しっかり治療しより良い生活を送るため、何か気になることがある方は一度ご受診をお願いいたします。

京都でアトピーにお悩みの方はこちらのページをご覧ください。

参考文献
・全日本病院出版会 2000年1月15日発行
『Monthly Book Derma No31「成人型アトピー性皮膚炎診療マニュアル」』
編集:東京医科歯科大学助教授 横関 博雄
・診断と治療社   2014年11月5日発行
エキスパートが答える!アトピー性皮膚炎 Q&A 55
編集:京都府医科大学皮膚科教授 加藤 則人

さの皮フ科クリニック|京都|

2021年4月29日 木曜日