幻冬舎からの依頼原稿があり、下記掲載されました。
本記事では、京都駅前さの皮フ科クリニックの佐野先生が「美容皮膚科・美容形成外科」で納得のいく治療を受けるポイントを自身の経験や考えをもとに解説します。
美容皮膚科・形成外科の医師は何を考えているのか
私の美容皮膚科・美容形成外科に対する考えが定まったのは学生時代。宴席で美容や形成の世界では知らない人がいないほど著名な形成外科医の隣に座る機会がありました。
私は若さに任せて「美容形成外科の医師っていうのはどうかと思います。美容形成外科は本来の医師の仕事ではないと思います」と意見したのです。
その先生は、自分の専門性を否定されたにもかかわらず、冷静に「君は交通事故などで顔を損傷した人にそのままで人生を送れというのですか。そういう技術をもつ医師は必要なのです」と答えてくださいました。
また研修でお世話になった救命救急センターのベテラン看護師にも「救急医療で一番つらいと感じることは何ですか?」と質問したことがあります。
その看護師は「顔を事故で損傷した人をみること」といいました。「それはなぜですか?」と聞くと「やっぱり顔はその人そのものを表す大切な部分なのに、そこがめちゃくちゃになった患者をみることが一番つらい」と答えてくださいました。
美容皮膚科・美容形成外科を受診するときに重視してほしいこと
かつて『人は見た目が9割』という本もありました。顔はその人を表す大切な要素です。上記の2つの意見を聞いたことで皮膚科専門医としても患者さんの顔の悩みに寄り添って解決することで世の中に貢献していくことを決めました。
私が皮膚科専門医として貢献することに決めて20年弱経ちました。現時点での美容皮膚科や美容形成外科について個人的価値観をお伝えしたいと思います。
私は医師として自分の家族にしないことは他人である患者さんにもしないと決めております。現時点で正しいとされる医療であっても、将来誤った治療であったとされることもあります。
今の自分にできるなかで最も患者さんの価値観に沿っていると思われる治療をおすすめしています。一例をあげますと私は個人的価値観から胎盤を利用した薬剤であるプラセンタ注射を扱っていません。更年期障害の治療として保険医療でも使われています。もちろん美容にも効果があるとされています。
しかし、病気で苦しんでいる人に使うことは否定しませんが、将来的に未知の感染症などを考えると私は美容での使用目的で家族にはプラセンタ注射をしません。
プラセンタ注射を自分にも注射している女医さんに質問したことがあります。「自分と患者にしても自分の子供には打たない。安全かどうかわからないから」といっていました。
このように、医師によって治療に対する考えは異なります。納得のいく治療を受けるためには、価値観のあう医師やクリニックをみつけることが一番大切かと思います。いまどきのクリニックや病院であればホームページに理念や価値観を反映させた情報発信をしています。そのホームページをしっかりと見て、信用できる医師なのかを診療のときに実際に話してみて確認することが大切です。
美容皮膚科・美容形成外科ではない皮膚科医だからこそできる貢献とは
私は美容皮膚科医として「作りこまず、その人がもっている年齢相応の、健康的で美しい肌を取りもどす」という価値観を持っています。
ですのでニキビ、ニキビ痕、赤ら顔、炎症後色素沈着、肌質、シミ、ほくろ、脱毛などの治療では、保険診療の適応があれば、まずその治療を提案し、保険診療での治療でカバーできない分野は自由診療の治療を提案します。
ほくろのせいで髭剃りのときによく血が出るから手術したいという人には手術を勧めます。しかし、見た目の問題でほくろを取りたいと来た人には、個性であり魅力であるので取らなくてもいいし、保険診療であれ、自由診療であれ、思った通りになるとは限らないし、元に戻せない。それでもいいかをよく考え、身近な人にも相談したかを確認します。
期待と昂揚で冷静さを失っている人も多く、一度は帰宅してよく考えてきてもらうことが多いです。このせいで、せっかく期待して来院していただいた患者さんを失望させてしまうかもしれませんが、美容皮膚科としての私の理念は「訪れる人に安心と満足を」です。
訪れる人があとで後悔したり、トラブルになることを望んでいません。やってよかったと本当に思ってもらえることが我々の使命ですから喜んでお手伝いします。美容でお悩みの皆様が信頼できる美容皮膚科・美容形成外科と出会うことができることをお祈りします。
佐野 陽平
京都駅前さの皮フ科クリニック 院長/皮膚科専門医、内科認定医