アトピー性皮膚炎へのスキンケアの重要性
アトピー性皮膚炎の患者さんへのスキンケアは基本中の基本でです。よく患者さんにアトピー性皮膚炎について一言で言うならば体質的に「皮膚が弱い」ということですとお伝えしています。
アトピーと診断される基準
日本ではアトピー性皮膚炎の患者さんが約40万人程度いると言われていますが個人的にはもっと多いのではないかと思っています。
昔の皮膚科学会のガイドラインではアトピー素因(アレルギー体質)があることも診断基準に入っていましたが、新しいガイドライン(2021)ではそれが重要視はされなくなり、半年以上繰り返すかゆみ湿疹があるという風に診断基準が甘くなった印象です。
これならより多くあてはまる人が増えそうな印象を持ちます。
その診断基準に当てはまるのに誰にもアトピー性皮膚炎と診断されたことはないとよく患者さんたちは言います。医者も診断することに気を使っているのか、患者さんが点々とあちこちの皮膚科に行くのか。繰り返す湿疹の原因が中途半端な治療をしていることにもあるのかもしれません。
ですから当クリニックではまずはしっかりと治療して一旦完全に湿疹のない状態を目指します。
当クリニックでも説明は繰り返しするのですが皆さんお忙しいせいか、面倒なせいか続けてもらえないことが多いです。しっかり治療したにもかかわらず湿疹がなくならない繰り返す原因不明の湿疹ならばアトピー性皮膚炎の診断でいいと思います。
原因不明がアトピー性皮膚炎の診断基準の基本です。しかし、現実的に本人さえわからないような湿疹の原因を特定することは至難の技となることは間違いありません。
アトピーになる遺伝子について
2006年に皮膚バリア機能の役割を果たす蛋白としてのフィラグリン遺伝子異常とアトピー性皮膚炎との相関が指摘されています。日本ではアトピー性皮膚炎の患者さんの2、3割の方にフィラグリンの遺伝子異常があるそうです。
角層(いわゆる垢)は落ち葉のように10層程度重なっています。フィラグリンはその角層(垢)の主要な構成成分です。その働きは多岐にわたりますが最終的には天然保湿因子になるといわれています。フィラグリンが欠乏すると天然保湿因子がでないので水分が保てなくなって乾燥し、垢も落ちやすくなってしまいます。
アトピー肌のスキンケアについて
保湿を内服ではできないので外部から補充することになります。
保険で処方できる保湿剤は大きく4つに分類できます。
①軟膏基材
軟膏基材はいわゆるワセリンでそのものに保湿効果はなく、角層表面に油膜を作ることで皮膚からの水分の蒸発を防ぎ保湿効果を発揮する。従って保湿効果を発揮するために十分な皮膚のうるおいが必要となります。ただ経験上ではしっかりというよりベタベタのたっぷりが大切かと思います。それだけで随分と乾燥が防げると思います。
ただ寝具類や普段着などに付着した軟膏の油が洗濯で工夫しても取れにくいです。パジャマ寝具も治療の一環として割り切る考えも必要かと思います。不純物をなくしたものをプロペトといい、さらになくした高級品がサンホワイトと呼ばれています。
②ヘパリン類似物質製剤
ヘパリン類似物質は水分を保持することで保湿効果を発揮することから、軟膏基材同様に十分な皮膚の潤いは必要となります。ヒアルロン酸と同じムコ多糖類の一種です。血行促進、抗炎症作用があります。ですから薬効にしもやけや傷跡など様々な効果もあります。
③尿素製剤
尿素は天然保湿因子の構成成分です。一応皮膚の皮膚のバリア機能を回復したり、抗菌ペプチドの活性を高める作用もあるそうです。サメ肌(魚鱗癬)のように皮膚がひび割れたような乾燥の方に使用すると時間はかかりますがきれいな肌になること多いです。保湿はいずれたっぷり、乾燥具合に合わせて何度もすることが何より大切かと思います。
④ビタミンA油製剤
ビタミンAは角化細胞の分化に関与すると言われています。角層の脱落を促進させますので、当クリニックではかさかさとした手荒れの患者さんによく処方いたします。
京都でアトピーの治療をご希望なら京都駅前さの皮フ科クリニックまでお気軽にご相談下さい。
執筆者情報
京都駅前さの皮フ科クリニック 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 院長 佐野陽平