にきびに対する保険での治療方法には限りがあります。にきびが保険診療だけでニキビ患者に見えなくなればいいのですが、それだけでは難しいことが多々あります。お薬を塗るだけでも良くなりませんし、生活習慣も大切です。そこで今回はにきびに関するスキンケ製品のひとつであるアゼライン酸をご紹介しようと思います。

アゼライン酸クリームについて

当クリニックで保険診療では元々さらに治療方法がない赤ら顔の病気である酒さ(しゅさ)の患者さんのために用意し、院内販売をしていました。

しかし、本来はニキビ患者さんのためのスキンケアクリームとして扱われています。1日2回塗るクリームです。

催奇形性試験・遺伝毒性試験において陰性であり、妊活中や妊娠・授乳中も安全に使えるので便利です。

なお耐性獲得試験(効きにくくなる)も陰性です。ただ、刺激感があるのでトラブル対応が必要なために市販はされておりません。クリニック限定製品としてロート製薬が製造販売をしております。皮膚科クリニックならそのトラブル対応ができるからです。

 

海外のニキビ治療ガイドラインでも推奨されています

基本的に日本ではにきび治療は世界に比べて遅れているといわれています。

やはり、欧米では肌がきれいであることが日本より価値観が高いのでしょう。日本では認可が降りていないような、いわゆる激しい治療も積極的に行われているようです。

グローバルなニキビの治療ガイドライン

Acne Global Allianceにおけるざ瘡治療ガイドラインでは非炎症性皮疹(白ニキビ、面皰、毛穴のつまり)に対して、第一選択薬としてレチノイド外用剤(一般名:アダパレン、商品名ディフェリンゲル®など)が推奨されております。レチノイドも刺激があります。また授乳妊娠患者は使えません。

第二選択薬としてアゼライン酸(DRX®AZAクリア®など)およびサリチル酸が推奨されています。

このアゼライン酸は海外ざ瘡治療アルゴリズムに掲載されており、ざ瘡治療薬として30年以上の実績と20か国以上で市販されている実績があり、海外におけるエビデンスからも有効性が確立した製剤です。

アゼライン酸とは小麦やライ麦の穀物類含まれる成分からできています。角化の抑制作用(毛穴を詰まりにくくする作用)、および抗菌活性が報告されていますので非炎症性皮疹だけでなく炎症性皮疹(赤ニキビ)の改善も期待できます。

実際の治療効果について

治療効果

アゼライン酸単独のみの効果判定として顔面に30個以上ニキビのある軽症(6.9%)から中等症(93.1%)の日本人患者さん28名に1日2回アゼライン酸を朝夕洗顔後に0.5gずつ12週間塗布した試験の論文があります。

皮疹減少率は総皮疹50%、炎症性皮疹(赤にきび)62.5%、非炎症性皮疹(白にきび)46.2%であった。

減少率75%以上である「著名改善」13.8%、減少率50%以上である「改善」は51.7%であった。

海外の同様の実験でも同様の結果となったようです。

副作用

患者アンケートではこの薬の特徴である紅斑・乾燥・落屑・刺激感などを感じた人は2週間目までが多く、ほとんどの方が何らかの症状を経験するようです。刺激感などで脱落した人はいないので継続は可能な程度のようです。約80%の方が3週間後までに効果を感じたそうです。やや良くなったと感じる人は90%以上だったそうです。今後もまあ使いたいという人は85%いたそうです。

治療期間について

ニキビ患者さんは皮膚科受診したら7日間程度でニキビが治ると思っているというアンケートもあるように患者さんはニキビ治療に関して期待が大きすぎるようです。

この認識を変えてもらうことに外来でも大変苦労します。

ニキビは大変治りにくく、ニキビ患者さんに見えないようにすることが私たちのクリニックの成果として頑張っておりますが2,3年はかかる印象です。どのみち治療に時間がかかるものの、やはり市販のスキンケア用品との併用することをお勧めします。刺激感はあるものの妊娠などに関係なく使い続けられてニキビの原因菌であるアクネ菌に対しても耐性などがないことが非常に優れていると思います。

元々酒さと診断されるほどではない軽度の顔面にあかみがあった方なども効果があるかもしれません。一時的にはアゼライン酸のために赤くなりますが、慣れてきたら赤みは消えますので元々の赤みも目立たなくなるでしょう。

なお、うれしいことにアゼライン酸がチロシナーゼ活性阻害作用を有することから色素沈着症に対しても用いられます。

要するにニキビの炎症後色素沈着、美肌効果があるということです。

15g税抜きで1本1800円程度と高額商品でないこと。1本あたり1か月程度もつということ。ロート製薬という一流企業の製品である。バランスの取れたよい製品ですのでニキビだけでなく、赤ら顔、美肌効果を求める方にお勧めいたします。

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当院でも処方しております。京都でニキビにお悩みの方はこちらのページをご覧ください。

執筆者情報

京都駅前さの皮フ科クリニック 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 院長 佐野陽平

 

参考文献

川島眞,林伸和,小柳衣吏子:20%アゼライン酸クリーム(R410)の本邦尋常性座瘡患者における有効性および安全性の検討,Aesthetic Dermatology,21:32~41, 2011

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